REAL FAILURE STORY
まる助さんの失敗談
SNSを開けば、「SNS発のビジネスで自由を手に入れた」「未経験から月収100万円」といったキラキラした言葉が流れてくる。若者の失敗談やリアルな転落劇は、そういう輝かしい成功体験の陰に隠れてしまいがちだ。 だからこそ、あえて言いたい。 「SNSで見かけたそのビジネス、まずは失敗した僕の話を聞いてほしい」 これは、SNSの黎明期にSNSを通じて人生を狂わせかけ、お金も友人も失いかけた、僕の苦くてリアルな失敗談だ。 ・「彼女」を探していた、青かった僕 当時の僕は、まだ世の中の裏側なんて何も知らないどこにでもいる20代の男だった。当時全盛期を誇っていたSNS「mixi」を開くのが毎日の日課だった。 目的はひとつ。友達作り、そしてあわよくば「彼女を作ること」だ。 コミュニティや足あと機能を駆使しては、気になった女性にメッセージを送るような日々を過ごしていた。そんなある日、1人の女性から返信が届いた。プロフィール写真は可愛らしく、メッセージもとても親切で愛想が良い。何度かやり取りを重ねるうちに一気に距離が縮まり、ついに「一度カフェで会おう」という話になった。 当時の僕は完全に舞い上がっていた。まさか自分がネットの出会いでこんなに素敵な人と会えるなんて、と。胸を躍らせながら、指定されたカフェへと向かった。 ・カフェからの連行、辿り着いた「熱気」の正体 実際に会った彼女は、SNSの印象通り話しやすく、僕の話をニコニコと頷きながら聞いてくれた。 「僕の理想の展開じゃないか」と浮かれていたのも束の間、彼女がふとこんなことを言い出した。 「今日ね、これからすごく尊敬している『お兄さん』みたいな人のホームパーティー(集会)があるの。一緒にいかない?」 嫌と言う理由なんてなかった。彼女に気に入られたい一心で、僕は二つ返事でついていくことにした。 案内されたのは、都内のマンションの一室やホールのような場所だった。扉を開けた瞬間、独特の「熱気」と「違和感」が僕を襲った。そこにはスーツをビシッと着こなした大人たちや、やたらと笑顔が弾けている若者たちが大勢集まっていたのだ。 そう、僕が連れて行かれたのは、ネットワークビジネス(マルチ商法)の代名詞とも言える「アムウェイ」の集会だった。 ・洗脳のプロセス:FIREという甘い言葉 社会経験の乏しかった僕は、最初は「なんか怪しいな」と警戒していた。しかし、会場の雰囲気がそれを麻痺させていく。 実験混じりの商品デモンストレーション(洗剤や浄水器がいかに素晴らしいか) 「ダイヤ」と呼ばれる成功者たちのド派手な表彰式 海外リゾートで優雅に過ごす写真を見せながらの「自由な生き方(今で言うFIRE)」の体験談 「満員電車に乗って、会社に人生を捧げて満足?」「本当にやりたいことをやる人生にしたくない?」 壇上のプレゼンターが語る言葉は、当時の僕の心に刺さりすぎた。そして隣には、目を輝かせて「ね? すごいでしょ?」と微笑むあの彼女がいる。 「自分もこの仲間に入れば、彼女と一緒にお金持ちになれるのかもしれない」「自由な生活が手に入るのかもしれない」 訳も分からないまま乗せられた僕は、その場で入会手続きをし、高額なディストリビューター用のキットや商品を買い揃えてしまった。 失ったものは「お金」と「友情」、得たものは…… そこからの生活は一変した。 「夢を叶えるため」「不労所得を得るため」と称して、毎週末のようにセミナーに通い、購入した商品を誰かに紹介する日々が始まった。 ・ターゲットにされたのは、地元の友達や会社の同僚だ。 「すごく良い話があるんだよね」 「久しぶりにご飯食べない?」 そう言って久しぶりに連絡を取る僕を、かつての親友たちは最初は心配し、やがて呆れ、最終的には遠ざけていった。 「お前、変わっちゃったな」 「もう二度と連絡してくるな」 そう言われた時の冷や汗と絶望感は、今でも忘れられない。気づけば、僕の周りから本当の友達は誰もいなくなっていた。そして手元に残ったのは、狭い部屋を圧迫する在庫の山と、クレジットカードの重い請求書だけだった。 憧れていた彼女も、僕が「成果を出せない会員」だと分かると、徐々に連絡が取れなくなり、最終的には音信不通になった。最初から彼女にとっての僕は、「彼女候補」ではなく単なる「見込み客(カモ)」でしかなかったのだ。 お金も失った。友達も失った。青春の大切な時間も失った。 すべてを失って目覚めた僕の手元に残った唯一のものは、「人を簡単に信じず、裏を疑うこと」という、どこか悲しい処世術だけだった。 SNSでビジネスを始めようとしているあなたへ 今、InstagramやTikTok、X(旧Twitter)を見渡せば、「簡単に稼げる」「副業でFIRE」「自由なライフスタイル」という甘い言葉があふれている。形は違えど、僕がmixi時代に引っかかった構造と全く同じだ。 SNSで見かける「キラキラした成功者」の裏には、僕のように裏切られ、お金と人間関係を失って静かに消えていった無数の「失敗者」がいる。 もし、SNSを通じて怪しいビジネスや儲け話に誘われているなら、一度立ち止まってほしい。 「甘い言葉で近づいてくる人間は、あなたの人生を豊かにしたいのではなく、自分たちのカモを探しているだけかもしれない」 僕と同じような苦しい思いをする人が一人でも減ることを、心から願っている。